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知られざるベトナムのネット通販について細かく語る(1)

Publish: : 日本語 / Japanese

ベトナムのネット通販市場はどのようになっていて、なにがあってなにがなくて、どんな有名どころがいて、足りないところと足りているところはどこか、実際に使ってみて分析します。

ベトナムのインターネット通販市場の概観

急速な経済発展と、それに伴う中産階級の増加。そして2015年のASEAN統合。日本企業のベトナムを見る目は熱い。当blogでも過去に記事を書いた。

市場としての東南アジアで必要なSCM

これは本当だ。ショッピングマートには商品が並んでいる。高級なスマートフォンやタブレットを持ち、ドル換算すれば日本や米国と大して金額の変わらないカフェやファストフード店に入っている。一人あたりGDPから考えると分不相応といえるほど消費意欲は活発だ。

IT企業としては気になるのは、商業一般の中でもとくにe-Commerceだ。ネット通販。
普及しているのか? なにを使っているのか? なにが売れ筋か? すぐにいろいろ知りたいことが出てくる。

しかし、日本で手に入る海外のe-Commerce情報は米国がほとんどで、中国韓国やヨーロッパの情報がたまにでてくるぐらい。そこで、この記事ではベトナムのECについて書いていこうと思う。

まずはアウトラインをつかもう。
そもそもどのぐらいの規模があるのか。
で、実は、これを知るとがっかりする。

出典:Vietnnam e-Commerce Repot 2013
グラフのもとになっている数値データはこちらを参照

日本のe-Commerceの市場規模は923億ドル(2013年)、それに対して、ベトナムのe-Commerceの市場規模は22億ドル(2013年)。日本の2.3%の大きさしかない。

「高度成長する新興国の熱気!」
「人口構成が若者が多い! 60%が労働人口!」
「ASEAN統合で人口6億人の大市場が誕生(するかもしれない)」

などと煽りまくってみても、肝心な絶対値が小さい。考えてみれば当たり前で、人件費が安い国というのは、可処分所得も小さいという事である。

マクロ経済の視点から見てみると、高度成長していることは間違いない。だから国債や株式など相対的な値の変動で利益を考えられる商品にとってはよい国だろう。
しかし、実際に店を出して、売上高という絶対値を上げなくてはいけない商売人の視点にたってみると、なんだかメッキが剥がれたような気分がする。

しかし、本当にそうだろうか? ニッチはないのだろうか?
もっと細かく見てみよう。

市場の質感

実際にe-Commerceでの開店を検討するとなると、まず考えなくてはいけないのは、ベトナム人がネット通販でなにを買っているのかという事である。そもそもベトナム人はネットで買い物をしているのだろうか?

どれぐらいネット通販をしているのか?

いまでこそAmazonで本を買ったり、カカクコムで値段を比較するのを当たり前のようにやっているが、つい15年ほど前まで、インターネットでものを買うのはあまり一般的とは言えなかった。クレジットカード番号を入力するのは怖いし、わざわざ運送代を払うメリットがあると思えなかった。それが今やこうだ。

同じ事はベトナムでも言えるのか。日本と同じ状況なのか、違うのか。違うのならどう違うのか。
インターネットやスマートフォンの普及率や年齢層などの消費者の属性をみても、断片的にしか分からない。売上高で比較すると、物価差というややこしい問題が出てくる。

そこで、大雑把な方法だが、ベトナムのGDPに占めるe-Commerce業界の売上高の比率を指標としてみる。一人の人間に例えてみれば、自分の可処分所得のいくらをネット通販で使ったかという割合となる。

出典(e-Commerce sales): Vietnnam eCommerce Repot 2013
出典(GDP): 世界経済のネタ帳
グラフのもとになっている評はこちらを参照

e-Commerce売上高/名目GDP(米ドル換算)は、日本が1.88%で、ベトナムが1.29%。この差に意味があるのかはこれだけでは分からないが、他国と比べるとはっきりする。ベトナムの3倍の人口、5倍のGDPのインドネシアは0.21%にすぎず、インド(0.78%)と中国(1.98%)は、どちらも人口大国だが、中国人はインド人の倍以上ネット通販で買い物をしていることになる。これからすると、近いと言える。

ネット通販にどれぐらい金を使っているかは、日本人もベトナム人も、大差ないみたいだ。

ネット通販でなにを買っているのか?

日本人とベトナム人で、「消費生活に占めるネット通販のプレゼンス」が似たようなものだとするのならば、そこで具体的になにを買っているのだろうか。

分類項目が違うなど、全く同じ数値で比較するのが困難であるが、似たような数字を探してみた。

ベトナムの数字は、2013年にベトナムのネットショップで実際になにが売られてているかを数えたものである。
the types of products or services introducing on e-commerce websites(2013)出典:Vietnam e-commerce Report 2013
グラフのもとになっているデータはこちら

1位が衣料・靴・化粧品。2位がコンピュータ関係。3位が家電製品、4位が本。なんだか、他国の話と思えないほどそっくりである。

本当にそっくりなのか、日本の事例を見てみよう。こちらは、2012年に経産省が日本の消費者にアンケートを取って、最近ネット通販でなにを買ったかを調べたもの。

EC購入商品(2012)
出典:平成 24 年度我が国情報経済社会における基盤整備
グラフのもとになっているデータはこちらを参照

1位:書籍(電子書籍は除く)。2位:衣類、アクセサリー。3位:食品・飲料。
全く同じとはいわないけど、だいたい同じだ。

書籍が日本で1位でベトナムで4位なのは、日本にはAmazonが進出しているがベトナムには進出していないからだろう。家電の割合が日本では小さいのは、必要な家電がどの家庭にも揃ってしまったからだろう。そして日本のほうがエンターテイメントが多くて、分類も細かい。そういった国による違いはもちろんあるのだが、やはり全体が似ている。

メジャープレーヤたち

日本のネット通販市場と、ベトナムのネット通販市場は、米ドル換算した時の規模こそ違えど、構造というか、手触りというか、質感がよく似ている。

どんな商売でも、持込む先から売れていく、少なくとも国の経済成長率と同じぐらいは成長する市場、というわけではなさそうだ。しかし、日本市場と同じ考え方や同じ感覚が通じそうなので、日本市場で成功したのならば、そのセオリーはベトナムでも通じそうだ。

だとすると、次なる課題は、競合するにせよ協調するにせよ、この市場にどのような参加者がすでにいるかである。

lazada.vn

http://www.razada.vn/

http://www.lazada.vn/

自社で仕入れて自社で販売する、Amazonと同じタイプのネットショップ。国内一位の規模。ドイツ企業の資本が入っており、ベトナムの他にもタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンに展開している。

売上高は71 billion VND(342百万円)。訪問者数350万人。
取扱品目は、スマホ、PC、衣服、化粧品など、前章の取扱品目のとおり。
スマートフォンアプリを持ち、物流や倉庫に投資している。またFacebook Pageの規模も大きい。

Chodientu.vn

http://chodientu.vn/

http://chodientu.vn/

「電子市場」という意味のベトナム語。バーチャルショップをホスティングする楽天市場と同じタイプ。ただし、楽天市場よりもデザイン等の幅が少なく、オークションをしないヤフーオークションという感じ。出店者も店と言うよりも個人。国内最大手。

売上高は93.67 billion VND(452百万円)。ショップ(商人?)数は10万。
登録会員数が100万人で、うち20万人がホットユーザ。

5giay.vn

http://www.5giay.vn/

http://www.5giay.vn/

e-commerceというよりも商談をする掲示板。最終消費者に売るためのものと言うよりも、業者が仕入れに来るところ。なので、掲示板上での情報交換が主目的で、売買が成立したときは手数料を払う。まさに市場であって、20世紀のホームページのような乱雑な感じは、まさに市場の喧騒である。

5giay.vnは非常にベトナムらしいe-Commerceといえる。なぜそういうかというと、近所の市場で仕入れて小商いを行う零細商人がまだまだ健在だからだ。日本やアメリカでは流通が近代化されて巨大ショッピングセンターとコンビニとシャッター商店街になったが、ベトナムは街の中心は市場で、街の零細商人はそこで仕入れる。またそういった零細商人層がまだいる。

こういうタイプのe-Commerce platformはonline auctionに分類されており、ebay.vnと人気を二分している。

登録者数は115万人。
トランザクション額は2.21 billion VND(約1000万円)

hotdeal.vn

http://www.hotdeal.vn/

http://www.hotdeal.vn/

日本では普及しなかった共同購入サービスというか、フラッシュマーケティング。グルーポンと同じもの。こちらではonline promotion websiteと呼ばれる。774 billion VND(30億円)の市場規模を持ち、hotdeal.vnはそのうち51%のシェアを持つリーディングカンパニーである。

hotdeal.vnのクーポン(バウチャーとも呼ばれる)発行数は約300万枚(2013年)。ここホーチミン市に住んでいても、このバウチャーという単語は比較的よく耳にする。

今後の方針

次回以降、これらのネットサービスを実際に使ってみて、その長所短所をレポートしようと思う。

 

知られざるベトナムのネット通販について細かく語る 123

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