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ホーチミン市を大渋滞都市にしないためにITができること

Publish: : 日本語 / Japanese

IT for the social good

20世紀はモータリゼーションの時代だった。都市計画、渋滞、大気汚染、立ち退き、公害、そういったことはどの大都市も経験してきた。
しかし今は20世紀ではなく21世紀である。前世紀にはなかった武器、すなわちインターネットと高度に発達したモバイルITがある。
来るべきカタストロフィを避けるために、せめて緩和するために、ITで何かできることはないだろうか。

BRTを軸とした低速都市公共交通機関の再構成

TransJakarta bus on the dedicated bus lane(share from Wikipedia)

BRT(Bus Rapid Transit)とは、専用レーンをもつバス交通システムである。世界中にあるが、気候や生活スタイルの近似性から考えて、ジャカルタのTransJakartaが参考になるだろう。

TransJakarta
http://en.wikipedia.org/wiki/TransJakarta

12路線200kmに達する規模で、専用プラットフォームを持ち、大型連接バスを運行している。その輸送効率は良く、速度も早い。地下鉄なみ、とまでは言わないが、その利用感はバスよりも地下鉄に近い。ホーチミン市と大阪市が同規模ならば、それこそ大阪のニュートラムと同じぐらいの利用感である(世界的にはニュートラムもBRTも同じカテゴリの乗り物である。)

このBRTであるが、実はもう計画されている。ただしホーチミン市ではなくてハノイである。日本の政府開発援助も入った「ハノイ公共交通改善プロジェクト」の中で、世界銀行の協力でBRTが建設される予定だ。ハノイでのパフォーマンスが良ければ、ホーチミン市でも導入が検討されるだろう。

ハノイ公共交通改善プロジェクト
http://www.jica.go.jp/project/vietnam/016/outline/

BRTそのものは交通土木に関することで、ITは主役ではない。しかし、BRTの切符にはスマートカードが導入される予定で、これはかなり大きな可能性を秘めている。ITは決済部分を担う単なるサブシステムではなくて、社会を良い方に大きく変える力を持っていると思う。

乗り換えを前提としたバス路線網の再構築

現在のホーチミン市バスは、車掌がいる路線もあればワンマンの路線もあるが、一度の乗車ごとに乗車賃を清算する仕組みになっている。バス料金が5000ドンとして、乗り換えれば1万ドンかかる。現在地から目的地まで一路線で行ければいいが、そうでない場合は高くつく。そのためホーチミン市のバス路線は、系統が多く、一つの系統の路線距離が長い。これは輸送密度を下げ、待ち時間を増やし、ターミナル近くを混雑させる。

スマートカードにより乗り換えによる不利益がなくなれば、GPSを利用した乗り換え案内システムと合わせて、BRTによる幹線と、BRTの駅から個別の目的地へ向かう短距離支線に、路線網が再構築されるだろう。

スマートカードによるバスとバイクの協調運用

この街はあまりにもバイクを前提として作られてしまったので、今さらバイクを排除することは非現実的である。バスのほうが良いものはバスに、バイクのほうが良いものはバイクに、というように運用するほうが望ましい。

バンコクでは都市交通の駅の近くにバイクタクシーが集まるようになった。彼らは事実上近距離専用で、荷物を持つ人や歩きたくない人の補助という役割になっている。ホーチミン市内にもバイクタクシーは多く、あまり効率的とはいえない集客をしている。バンコクも都市交通の開通以前は同じような状況だった。だとすれば、ホーチミンのバイクタクシーも同じような形態になるだろう。

これを一歩進化させて、バスからの乗換情報を引き継げるようにすれば、「バスを降りれればバイタクが待っている」という状態になる。二歩前進させれば、「運行情報を元に目的地までの最短経路と乗車可能バスを割り出し、そのバスに乗れるバス停までバイタクで送ってくれる」というものも作りうる。
技術的にどうやってこれをするのかといえば、スマホだ。現時点で、バイクに乗っている人の携帯所有率は100%、スマホもそれに近いと考えられる。道路渋滞情報やバス運行情報は提供されるだろう。あとは、スマホでスマートカードの決済ができるドングルをつければいいだけだ。

車から税金をとってバス通学学生にポイントバックする

日経新聞によると、日本のJICAが援助して、今年6月からハノイのバスでICカード(スマートカード)の実証実験を行うそうだ。まずはIC定期券の普及を図るという。

IC乗車券、アジア展開、政府、ODAで後押し、まずベトナムに20万枚。
https://messe.nikkei.co.jp/nf/i/news/126428.html

ホーチミンでもバスに乗る人は、学生が多いという。50cc以下は免許がいらなかったり、電動自転車があったり、学生といっても「バイク」の利用者は多いそうだが、この層を公共交通機関利用者にシフトできないものか。

前に見たとおり、ベトナム人のバイク好きは、単に便利だからというよりも、愛情や自己表現のレベルに達していると思う。つまり文化そのものである。これを変えていくのならば、若い世代に訴えるほうが良い。

上記の記事によると、スマートカードは、日本のfelicaが入るという。これは非常に喜ばしい。それは筆者が日本人だからではなくて、felicaは交通機関以外でも使える電子マネーとして、非常に実績があるからだ。通学定期がfelicaになるということは、それは学生専用の財布ができたと同じことである。例えば、公共交通機関の利用状況に合わせて、ポイントバックがなされるという仕組みをつくり、そのポイントは特定用途の決済に使える。例えば書籍や学用品である。
もはや技術ではなく政策の話になるが、元はといえば車のために道路を空けるという話だから、受益者は車の運転者である。車かガソリンに税金をかけて、その税をこのポイントバックの原資に充当するということをしても良いと私は思う。

ソーシャル・インパクト・アセスメント 〜小さくはじめる社会実験

多くの日本人が誤解していて、「日本は携帯電話やスマホが普及したが、ベトナムなど途上国はこれからだ」と思っている。これは間違いである。すでに普及している。「すでに」というか、その国の文化や制度により多少のバリエーションの違いはあるが(例えばベトナムではSIMを手に入れやすいなど)、それだけのものに過ぎず、先とか後といった概念で考えるべきではない。

an employer using tablet at China town

an employer using tablet at China town

スマホやタブレット、3GやWiFiを誰もが持つ社会というのは、日本よりもむしろベトナムにある。ベトナムで社会に働きかけるなんらかのアクションを考えるときは、いつだってこれらIT技術をどう活用すればよいかを考えるほうが効果的だと思う。

それは、今までIT業界が考えてこなかった新しい問題も抱えることになる。社会へ与えるインパクトのアセスメントである。

良かれと思ってやった結果が裏目に出ることはよくある。ODAでダムを作ったら環境破壊になった、マイノリティの生存権を侵害した、零細事業者を潰してしまった・・・・等々。

今までIT業界はそんなことを考えもしなかった。より早く、より軽く、より便利に。ただ進歩だけを信じていればよかった。しかし、ITがここまでのものになってしまった以上、もうそこまで無邪気でいることはできない。「幼年期の終わり」だ。だからといって、実際に社会を変えるだけの力を持っている以上は、立ち止まることもできない。

ならばどうすればよいか?
私は小さな実証実験だと思う。
思いつきぐらいの早さで、うまく行かなかったら引き返せるぐらいの安さで、関係者一同が同じ完成イメージを抱けるぐらいの小ささで、とりあえず、最低限の事をやってみる。その結果を見て(アセスメントして)、方向転換してまたやってみる。これはダムやコンビナートではできないことだ。

これは今のIT業界の、新たな主流の考え方となりつつある手法だ。

グロースハックの大前提 「MVP」の種類と実例 5選
http://growthhackjapan.com/2014-02-14-5-types-and-examples-of-mvp/

こういう仕事をこそ、やってみたいものだと思う。

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